自動車人/黄耀鵬 中国から日本企業が撤退することは新しいトピックではないが、日本政府予算の支援を受けて撤退するのが初めてだ。 4月8日、「補正予算」に2200億円(約158億人民元)を投入し、日本企業が中国からの撤退を支援すると日本政府が発表した。 7月中旬、日本政府は87社が730億円の支援金を受け取ったことを控えめに発表した。このうち、57社が日本国内に戻り、30社が東南アジアに移転した。 日本から中国への投資は通常工業生産が中心であり、商業にかかわるのはそれほど多くない。自動車生産が重要な投資領域だ。撤退したスズキとダイハツ、そして中国市場にまだ未参入の富士重工を除き、ほとんどすべての日本自動車会社は中国市場に長期にわたって投資をしており、かつ重要な市場地位を占めている。 完成車メーカーに続き、中国へ進出したのは、その子会社とサプライヤー群だ。現地需要は日本企業の主流を占めている。日系自動車メーカーに加えて、ローカル系自動車会社も日本のサプライヤーたちの重要顧客だ。 市場が中国にある日本企業は撤退を求めないだろう。日本貿易振興機構(ジェトロ)のデータによると、2019年末時点、中国で事業拡大を図る日本企業が43.2%、現状維持が50.6%、事業縮小が5.4%、日本国内に撤退/第三国への移転を計画しているのが0.9%だ。 新型コロナウィルスの感染が故、産業チェーンが米中貿易摩擦以来の中国離れを加速させたのではなく、逆にそれを緩和させているのだ。 中国から移転しない日系企業には共通点がある。現地調達率(70%に近い)が高く、まして過去10年間で絶えずにそれを引き上げてきている。これはむしろ中国に生産拠点をおくという日本企業の方針に関係すると思われる。 高い現地調達率が現地販売比率と相まって、これらの日本企業は国際貿易状況の影響を受けにくく、比較的安定している。2,200万台という中国乗用車の市場需要は日本企業を中国に根差しさせた。そのため、日本企業が移転するかどうかを決定する際の決定要因は、移転費用ではなく顧客の動向だ。 一方、中国から撤退した日本企業は主に原材料と仕掛品を生産しており、主にリソースと労働集約型企業だ。 新型コロナウィルスの感染の最中、日本はマスクなどの単純な医療用品も中国に依存していることを意識し、それが受け入れられないことだと認識していた。その結果、「中国+1」戦略(中国での生産を維持しながら、海外のバックアップ生産拠点を増やす)は、民間の意識から政府の意思決定へと徐々に変化してきた。 米中貿易紛争が激化する中、米国を主なターゲット市場とする中国を拠点とする日本企業は、パニックを回避し、リスクを軽減するための対策を講じることを望んでいる。 中国南部地域では、人件費に代表される生産コストが年々と高騰しており、一部の日本企業は中国の希望通りに中国西部にではなく、東南アジアに生産を移管していた。また、高付加価値産業は、可能な限り日本へ撤退していた。市場の縮小と競争力の低下も撤退のもう1つの理由だ。 根本的に言えば、企業の投資先は経済的要因によって決まり、政府がそれらを左右できるものではない。 過去20年間で、中国は国際分業に参加し、完全な産業チェーンを形成し、バリューチェーンに沿って上昇している。これは歴史的な傾向だ。一部産業の中国離れは、産業チェーンを動的に調整するプロセスだと思われる。つまり、長期的には、産業チェーンがが常に変化しており、静的なものではない。 中国にある数万社の日本企業と比較して、補助金を受け取って撤退した数十社が非常に小さな割合だ。これは新しい長期トレンドの発端なのか、それとも産業チェーンが自ら最適化するプロセスの一環なのか、長期的な観察が必要を経てより説得力のある結論を引き出すことができると思われる。